ロボットって、めんどくさいから楽しい

 

今回は富山県立大学知能ロボット工学科でドンマス教授ロボットを開発し、 現在も機能を増やそうと目論んでいる先生方に集まっていただいた。   『ZZガンダム』を見てロボットを作りたいと思った小柳教授、自分の大学入試の面接で「ドラえもんを作りたい」と言った増田准教授、「四次元ポケットがあればドラえもんが出せるじゃん」と考えていた野田講師。 この先生方が作ったならこうなるだろう……と納得のドンマス教授も特別出演し、ここでしか聞けない座談会が始まる。    

 

 

――― 富山県立大学のマスコットであるドンマス教授をロボットにしようと発案したのはどなたなんでしょう?

小柳 それは私が……(笑)。学科名が知能ロボット工学科になる前の知能デザイン工学科の頃から、学科ならではのロボットを作って欲しいという意見はありましたが、どのようなロボットにしようか着想が浮かばなかったんです。ドンマス教授というちょうどいいキャラクターができたことと、学科名が知能ロボット工学科とわかりやすい名前になったので、このキャラクターをロボットにしてしまえばいいのではないかと思いました。  

 

――― 作っているときはどのような感じでしたか?

小柳 ワクワクとドキドキですね(笑)。納期的な意味でのドキドキ感。広報で使おうと言っていたので、センター試験に間に合わせようとすると年内中にはできていないといけない。しかしプロジェクトのOKが出たのは7月の上旬。半年もなかったんです。そんな意味でのドキドキです。      

 

 

――― ドンマス教授の実際の制作期間は?

増田 実際の制作期間はほぼ一ヶ月くらいですね。

小柳 中身の要素の選定にかなり時間がかかって、それが12月にようやく揃ったんです。色々な寸法がわかったのも11月になってからでして、それから着ぐるみの業者さんと一緒に外側のドンマス教授のカバーについて打ち合わせしました。赤ちゃんくらいのサイズのロボット外装は行ったことがあるが、このサイズのものはないからチャレンジしたいと。  

 

――― 人間が入る場合とロボットが入る場合、作り方は違ってくるのでしょうか?

小柳 基本的には変わらないんですが、デザインとして足の尾びれの部分が狭まっているので、人間が入ると歩けない。これはロボットだからできるデザインなんです。きっと着ぐるみだと下は柔らかいんです。しかし、ロボットということと、ダ ・ヴィンチ祭など様々な場で使われることを考えるとある程度丈夫にしておかないといけない。    

 

――― 改めてドンマス教授を眺めてみて……。

小柳 もともと発想の一つは先ほど話した(キャラクターをロボットにする)部分で、もう一つは増田先生のところで*まさる君を使って、ロボットと学生、ロボットと見学者とのコミュニケーションを行っていたことです。それと組み合わせるとどうなるかなということは考えていました。サイズが変わるから見た目から受ける印象も違うだろうということもあって、大きな人間に近いサイズのものにしてみました。デザインが初めから決まっていたので目つきは変えようがないんですが(笑)。    

 

 

―――まさる君が授業を行い、それを見守るドンマス教授の画はなかなかシュールでしたね。まさる君と行った授業については?

増田 まさる君の講義は、教育目的ではロボットから授業を受けることがないので、是非一度そういう経験をして欲しいという思いがありました。加えてドンマス教授というロボットが居るのであれば、出したいと。 まさる君の講義を始めたのも遊び心に近いところがあって、「とりあえず喋ることはできるからやらせてみようかな」というのが着想のきっかけですね。その後、ロボットでも学生とインタラクションしながらやると、人とまた違って興味を持って聞いてくれるのではないかと思い始めて、様々なことに取り組んできました。最初の年は札挙げ(Yes,Noのクエスチョン)をやってみたり、パソコンを使わせてアプリケーションで4択クイズをやらせたり。昨年は授業に参加している人の顔を撮って注意の向き方を推定して注意するというような。そんな風に色々と試しているところです。

 

――― ロボットを作りたいと思っている学生や子どもとの交流の頻度は?

小柳 研究で使っているので、いつでもとは言えないですが、ダ・ヴィンチ祭や、大学を公開するような時には大体出てもらっているので、どんどん触れ合ってもらいたいですね。  

 

――― 8月のダ・ヴィンチ祭ではどんな反応でしたか?

小柳 小学生くらいになってくるとだんだん「なんだこいつ面白い」と寄っていってくれる。もしくはちょっと遠巻きで眺めるくらいですね、初めは。幼稚園くらいだとじーっと見て危害を与えないと思ったら近寄っていくんです(笑)。

増田 そうですね(笑)。「初めて見る子だから緊張した」という感じだと言っていましたね。  

 

――― ドンマス教授の機能について。

小柳 人間が操作して、移動ができる。手を挙げて腕を動かすことができる。そして、お話ができます。操作している人間が打ち込んだ内容を人工音声を使って話をするんです。

増田 人工音声の声は悩みました。男の人の声をベースにトーンを180%まで高くして、ゆっくりめに話すように設定すると人っぽくない声になりました。わざとそういう風にした方が雰囲気が出るなと。人っぽい声にすると違和感の無さが違和感になるという(笑)。  

 

――― 作って良かった点は?

小柳 人間のリアクションが見られるというのは良かったですね。我々の実験研究、私だと医療福祉リハビリ分野であれば、患者さんという限られた相手にしかリアクションをもらえない。彼らとしてはロボットがどうとは見ていなくて、リハビリとしてどういう機能を持っているのか筋トレのマシンとしてはどういう機能を持っているのかというところに興味がいくんですが、ドンマス教授はロボットとしての見た目に対する反応が見られてとても新鮮でした。

増田 イメージとのギャップって楽しいなと思っていて。僕の研究の場合はまさる君のような小さいロボットを使うことが多いんです。いざ作ってみて、ロボットがこの大きさになると何か印象が全く違って感じるなと。なんだろうと思わず見てしまう存在感があります。まさる君が移動していてもASIMOのおかげでそんなに珍しくないんですが、この大きさだと人に与える印象が全然違って面白い。ASIMOだとメカメカしいのでこういう風に動くんだろうなと想像がつきやすいですが、ドンマス教授はこの見た目ですから、「まだ何か隠し持っているんじゃないだろうか」という怪しさを醸し出していますよね。頭が開いてドローンが出てきてもおかしくないですから(笑)。そういう謎のキャラクターで(笑)。  

 

――― 今後ドンマス教授をどのように進化させていきたいですか?

小柳 まさる君との授業の時、大きすぎてすぐには講義室に入れなかったんですよ。普段開けない扉を開けても1センチの隙間もなくドンピシャで入れようと。

野田 今は腕の部分を変えたんです。最初の形から少し変わっています。

小柳 とりあえず人間とのインタラクションをもっと色々できるようにしたいなと考えていて、まず握手できるようにしたいです。

野田 前ヒレを動かし、開けるように進化しています。握手して触られたら、ちゃんとわかるような感覚を入れようとしているところです。触ったらどのように触られているかがわかるように、まず手先から触覚センサーが入る予定です。

小柳 できれば身体中に仕込みたいですね。画像だけでは通路につっかえたりしてもわからないので、触覚は増やしたいと思っています。

増田 まさる君がやっている、話したり、スライドや動画を変えたり、学生の持っているアプリと連動して問題を出したりという機能と同じようなことをできるようにしてあげたい。見た目がまさる君とドンマス教授とは違うので反応も変わってくるのではないかと非常に興味があります。

小柳 見た目のキャラクターが違うと当然話し方も違ってくるはずなので、それぞれが同じ場面で同じことをして学生の反応にどのような差があるか、人間の講義と比べて見たいというのはありますね。ロボットだからできる動きやインタラクションというのがあって、声色も簡単に変えられる。人間はできないですよね。それであれば同じテーマの講義をするのに、人間とロボットだと食い付き加減がどの程度違うのか、理解度はどう違うのか比べてみたいですね。

増田 大きさがメリットになってくるのではと期待しています。

野田 あとは顔の表情をもうちょっと豊かにしてあげると人とインタラクションしやすいかなと思っています。自分がやっているのが五感のセンサーで人と同じような感覚を持たせるということで、それと同じようなものをつけて匂いや味がわかるようになるといいなと思っています。  

 

――― 進化のスピードは?

野田 普及すると進化するというのは、人が集まって使った人が増えるから進化するんですね。ドンマス教授はもっと皆が大学に入ってくれて一緒に色々いじり倒してくれると進化する。

増田 そうですね。

小柳 そういうことで、学生募集中です(笑)。  

 

――― 最後にお三方からロボットへの思いをお聞かせください。

増田 ロボットを作っていると遊べて楽しいです。うまく作れてもそうですし、間違えてもそうですけど、できたらできたでバカバカしいことをとりあえず試してみる。こんなことができるようになったから真面目な方にも使っちゃおうということはよくあります。僕も音声合成を作って「喋れるようになったから先生の口真似やってみよう」って。遊び倒してから真面目なところに転用しているという部分はあります。 小柳 本当にできないことって意外とないっていうか。時間はかかるかもしれないし、他の人と一緒にやらないといけないことはたくさんあるんですけど、なんとかできちゃう。

野田 ロボットってめんどくさいから楽しいんです。試行錯誤して一つ一つ問題を見つけて解決して。自分のやりたいことがちゃんと活かせるのがとても楽しいですね。  

 

*まさる君……富士ソフト製ヒューマノイドロボットPALROに増田准教授の研究室で開発した知能を搭載して,講義を行うことができるプレゼンロボット。



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