森重 健一
人間の運動メカニズムを解明する
「人間はどうやって器用に体を動かしているのか。脳の仕組みを知りたい」これが私の研究の出発点です。私たち人間は、実に細かくて正確な運動ができるものです。たとえば、針に糸を通したり、目標物を正確に指差すことができます。私たちは特に意識せず、このような運動を自然に行っていますが、どうしてできるのでしょうか。こうした人間の運動における脳の仕組みを解明すべく取り組んでいます。そのためには人間がどういうメカニズムで運動を行っているかを理解する必要があり、計算理論を構築するというアプローチで研究を行っています。
脳波を計測し、BMI開発に応用
人間が動くときは、脳から筋肉への正確な信号が送られます。複数の腕の筋肉を一緒に動かして、指令通りに運動するわけですが、このとき脳や神経系の活動はどうなっているのでしょうか。それを調べるために研究室には、脳波計や3次元位置計測装置があり、実際に学生と一緒に脳や筋肉の活動を計測しています。また、人間の運動に関するデータを応用して、Brain–Machine Interface (BMI)に応用展開する研究を行っています。BMIとは、人間の脳信号を適切に解読して、ロボットを操作するインタフェースです。人間が「こうしたい」と念じるだけで、ロボットを動かせるようになるものです。BMIは、全身の筋肉が萎縮して動かなくなる難病(ALS)や、脊髄損傷などで思うように体を動かせない患者さんの助けになります。また健常者でも、バーチャルリアリティへの応用や、身体機能の拡張などを目的として、研究が行われている分野です。
世界で最初に発見した瞬間の嬉しさ
これまで難しいと思われていたことが、自分たちのアイデアでうまくいくようになったり、そのアイデアが世の中の役に立ち、新たな発見や発明につながると、とても嬉しく感じます。特に、あることを世界で最初に発見したときは「自分しか知らないんだ」なんて、とてつもない嬉しさを感じますね(笑)。研究は地道な努力が必要ですが、ときに息抜きも大切です。私は休みの日には、走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりと、体を動かしています。トライアスロンが好きで、趣味として続けています。そういったリフレッシュできる時間がまた、研究への原動力へとつながっているのかなと感じます。
なによりもチャレンジ精神を持って
私がみなさんに伝えたいことは「チャレンジ精神を忘れずに」ということです。いろんなことに興味を持ち、前向きな人は研究を楽しめると思います。研究は短距離走というよりは、長距離走のように、長い道のりがあります。困難に直面することもあるでしょうが、その状況を楽しめると良いですね。「こういうことに興味がある」という人は、一緒に研究をしましょう。