伊東 聡

 

いつでも正確な測定を目指して

電子機器、自動車、ロボットなどに使用される部品は設計図の通りに正確に作ると、正しく動き、壊れにくく長く使えます。しかし、ある部品を高価な計測機で測って1メートルとなっても、測定値には必ず誤りがあり、1メートルの決まり(国家標準)とは一致しません。正確な測定方法の開発と測定の信頼性の確立が私の研究です。主に三次元計測を取り扱い、1マイクロメートル未満の非常に高い緻密さと正確さでモノの大きさや形を測ります。いつでも誰でも正確に測れる測定機を実現することが目標です。

 

 

 

 

計測技術でものづくりの未来を拓く

計測には機械工学や電気電子工学,物理学、化学の知識が不可欠です。また、計測データの解析には情報工学や統計学も使います。例えば,私の研究では光の干渉という現象を使って、熟練技能者による加工の出来ばえを計測しています。これは経験や勘頼りの技能を科学的に明らかにし、技術向上や技能習得に利用して、新しいものづくり技術の発展を目指す研究です。研究に使用する機械部品や電子回路、プログラム等は自分たちで設計製作するので、卒業後に生産技術職や技術開発職に就きたい人には実践的な経験ができるでしょう。また、DX教育研究センタにある様々な測定機器も使いますので、研究を通して色々な計測機の使い方を学ぶことができます。

 

問題はブレークスルーのチャンス

研究では、問題にぶつかって思うように進まないことはよくあります。しかし、それは失敗ではなく、新しい研究テーマを見つけるチャンスだと私は捉えています。研究では「新しさ」を求められますから、問題にぶつかることは次の研究テーマのヒントになるのです。逆に、物事が順調に進むときは要注意です。未知のテーマに取り組んでいるはずなのに調子良く進むときは、すでに先駆者がいることを疑わないといけません。また、重要な課題を見落としている可能性もあります。問題解決(ブレークスルー)のヒントはあらゆるところにあります。休みの日も、時間があれば研究のことを考えていますが、子供と一緒に公園で遊んだり、絵本や図鑑を眺めたりしていると、色々な発見やヒントがあり面白いですよ。

 

苦労は身から出た錆

計測結果には必ず誤差があり,計測の正しさを追求するには、誤差を生む問題点と向き合わないといけません。がんばって得た結果を振り返り、時には疑うのです。それは勉強や研究、仕事も同じです。自分の行動や結果と向き合い、問題点を認め、やり方を変えていく必要があります。研究室のメンバーには「苦労は身から出た錆」という言葉を贈っています。失敗したり、間違いをおかしたりすることは誰にでもあります。大切なことは、失敗や間違いを振り返り、苦労した経験から想像力を働かせ、同じ間違いを繰り返さないように行動を変化することや未来の苦労を回避していくことです。成功体験では失敗の後悔を埋め合わせられません。失敗の後悔は汗や恥をかき、日々学ぶことの積み重ねでしか取り返せません。失敗を恐れず、失敗から学び、成長しましょう。



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