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富山県立大学 ダ・ヴィンチ祭2008
知能デザイン工学科 平原研究室

逆転音声とは

 「トマト」はさかさまに読んでも「トマト」、「竹薮焼けた(たけやぶやけた)」をさかさまに読んでも「たけやぶやけた」。 このように、左から読んでも右から読んでも同じ読みになる言葉や文章は回文(かいぶん)と呼ばれます。

 普通の文を逆さまから読むと、たいていは意味を成さない文になってしまいます。例えば「皆さんお早うございます(みなさんおはようございます)」という文を、 右側から読むと「すまいざごうよはおんさなみ」となってしまいます。  では、この文を普通に読み上げた音声を録音して逆に再生するとどうなるでしょうか? 文字を右側から逆さまに辿った「すまいざごうよはおんさなみ」とは聴こえません。 不思議なことに、「サミヤーゾゴーヤホ、ゥアサニ!」と 外国語のように聴こえます。このような、時間を逆さまにして再生した音声を逆転音声と呼びます。

 それでは、聴こえたとおりに「サミャーゾゴーヤホ、ゥアサニ!」と発話した音声を録音して、逆に再生すると、どのように聴こえるでしょうか? 不思議なことに、ちゃんと「みなさんおはようございます」と聴こえます。

どうして??

 「みなさんおはようございます」をローマ字で書くと下のようになります。

 / mi na saN o ha yo go za i ma su /

日本語の音声は母音・子音・母音・子音・・・とつながっていますので、右側から母音・子音のぺアーを取っていくと、

 / u sa mi a zo go ya ho Na sa ni m /

となります。ここで、

 「〜ます」といった語尾の母音/ u / は無声化してはっきりと発音されませんので、最初の / u / を取り除きます。

 /mi a/ は 「ミャ /mya/」 と聴こえます。

 /Na/ は 「ナ /na/」ではなく、「ンア /Na/」、あるいは、「ゥア」と聴こえます。

 / ni m / は 「ニ /ni/」 と聴こえます。


これらを修正すると、逆転音声のローマ字表記は

 / sa mya zo go ya ho ua sa ni/

となります。どうです?「サミャーゾゴーヤホ、ゥアサニ!」になったでしょう。

 このような音声を逆さまに再生するためには、昔はテープレコーダーを使っていました。 最近はパソコンの上で録音再生できる様々なフリーウエアが入手可能で、それらを使えば音声の逆転再生を簡単に試すことができます。 Windows XP にはサウンドレコーダーというソフトウエアが最初から入っています。「スタート→すべてのプログラム→アクセサリ→エンターテイメント」で探し出せます。自分の声でお試しください。

音声を可視化してみる

 下の図はある男性が発話した「みなさんおはようございます」という音声の波形(上段)と スペクトログラム(下段)です。スペクトログラムの横軸は時間、縦軸は周波 数、色の濃さは成分音の強弱をあらわしています。赤っぽい色ほど成分音が強いことを示し、 青っぽい色ほど成分音が弱いことを示します。時間とともに強い成分音が刻々と変化しているのがわかります。


Figure1

 下の図は同じ男性が発話した「サミヤーゾゴーヤホ、ゥアサニ!」という音声の波形と スペクトログラムです。上のスペクトログラムと見比べてみてください。だいたい左右が逆になっているのが分かります。

 私たちの耳は音声をこのようなスペクトルに変換し、私たちの脳がそのスペクトルの変化を聴き分けて、言葉に翻訳しています。

Figure2