本吉 達郎

 

視覚障がい者もプログラミングを学べる

私は学習支援システムの開発と、その評価に取り組んでいます。たとえば、PC(パーソナルコンピュータ)を操作することなく、プログラミング作業を学べるツールの開発です。RFIDタグと呼ばれる薄いシートが貼られたブロックを並べ替えて、「あそぼ」としゃべるプログラムを作ることができます。RIFDリーダーがブロックの情報を読み取って、PCが読み上げます。子供たちはもちろん、ブロックは手触りで種類が判別できるので、視覚に障がいを持つ人もプログラミングの仕組みが学べます。これまで目の見えない方は、プログラミングを学習する機会がほとんどありませんでした。工学的に最先端ではないかもしれませんが、既存の技術を使い、私たちが見落としていたところに、貢献していこうというものです。ほかにも視覚障がい者の生活をサポートする機器を開発しています。

 

 

ロボットでなく、人間が賢くなるために

私たち人間は、どうやって学んでいくのでしょうか。人が賢くなるプロセスに興味を持ったことが研究を始めたきっかけです。機械を賢くするのは、やろうと思えばできます。例えばバッティングロボットを作って、時速200キロで来る球も打ち返そうと思ったら、打ち返すことは可能です。でも、賢いロボットに人間が頼れば、どんどん私たちは衰えていくでしょう。どんなに技術が発展しても、人間が賢くならないと意味がない、これが自分の考えの根底にあります。小学校でのプログラミング教育が必修化されていますが、その下の土壌部分をまず育ててあげたい。情報機器を触る前に、こうしたブロックを使って理解しておけば、プログラミングの操作を学ぶ時に、すっと入っていけるはずです。

 

 

趣味のバイオリンを弾きながら

私はバイオリンが趣味なのですが、楽譜とプログラミングは共通するところがあります。楽譜は言葉でなく、音程や高さをただ形式的に示した記号のようなものです。プログラミングも一緒で、機械に対して形式的に命令を与えるんですね。そういうのを形式言語といいますが、少しでもルールから外れたら機能しません。楽譜にある情報をもとにコンピュータで再生したらこうだよ、人が再生したらこうだよ、というのをデモするために、講義でバイオリンを使って実演したこともあります。

 

 

人との出会いで視野を広げよう

夢を描くのはとても楽しいものです。同じように、研究のストーリーを妄想しているときは楽しいです。研究を続けていると、自分にはない思考や知識を持つ人とつながる機会がたくさんあり、ありがたみを感じます。大学に入れば、いろんな知識を持った先生たちと出会えます。それは、世界の広がりを意味しています。問いと答えがワンセットになっているこれまでの高校の勉強とは違い、大学では問いも自分で立てなきゃいけません。答えを誰も知らない問いにアプローチする、楽しさを体験してください。大学では専門分野だけでなく、教養課程の授業もありますから、いろんな分野の話を聞いて、視野を広げていきましょう。



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